技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第2回)
法務省 出入国在留管理庁HPより抜粋
議事要旨
日時
令和5年1月31日(火)15:00~17:00
場所
法曹会館2階「高砂の間」
出席者(敬称略)
有識者
田中座長、高橋座長代理、市川委員、大下委員、黒谷委員、是川委員、佐久間委員、鈴木委員、武石委員、冨田委員、冨高委員、樋口委員、堀内委員、山川委員
関係省庁
(内閣官房)
小玉参事官、岡野参事官
(出入国在留管理庁)
福原審議官、礒部政策課長、本針在留管理課長
(厚生労働省)
原口審議官、吉田外国人雇用対策課長、川口参事官(海外人材育成担当)、今泉福祉基盤課福祉人材確保対策室長、木下生活衛生課総括補佐官
(農林水産省)
菊池協同組織課経営・組織対策室長、猪狩食品製造課専門官、古川外食・食文化課専門官
(水産庁)
青木企画課企画官
(経済産業省)
伊奈製造産業局総務課参事官
(国土交通省)
鹿渡国際市場課建設産業海外ビジネス戦略官、濱中船舶産業課課長補佐、竹村整備課課長補佐、太田航空ネットワーク企画課空港機能高度化推進官、佐藤安全政策課課長補佐
(観光庁)
栃原観光産業課課長補佐
議事内容
○ 論点について、【資料1】のとおり決定。
○ 出入国在留管理庁礒部政策課長より、【資料2】に基づき、「ヒアリング結果」について報告。
○ 出入国在留管理庁礒部政策課長より、【資料3】に基づき、「特定技能制度の分野所管省庁における取組状況」について説明及び質疑応答。
○ 出入国在留管理庁礒部政策課長より、【資料4-1】、【資料4-2】及び【資料43】に基づき、「論点第1」に係る現状について説明。
○ 各有識者より、論点第1などについて、下記のような意見があった。
【制度目的(人材育成を通じた国際貢献)と実態(国内での人材確保や人材育成)を踏まえた制度の在り方について】
○ 両制度の見直しに当たっては、作業範囲や労働時間数の制限の緩和、安定的に外国人材が活躍できる環境整備や監理団体等による受入れ、支援体制の充実が必要。
これらを実現することにより、事業者と外国人材の双方にとって発展的な制度になる。
○ 技能実習で学んだ技能を帰国後に生かすという意味での国際貢献の実態はなくなっている。
技能実習は国内における人材の確保を制度目的とする制度に明確に置き換えるべき。
この場合、人材育成は結果であって目的ではない。
○ 技能実習制度が技能の修得という人材育成の点だけでなく、出稼ぎ労働のために利用されていることは否めないが、技能実習制度本来の目的に沿って活動している監理団体も少なくない。
技能実習制度と特定技能制度とで明確に対象をすみ分け、両制度を共存させながら、監理団体、登録支援機関、実習実施者、特定技能所属機関を生かしていくことが必要。
○ 技能実習制度は、人材育成と人材確保の二つの役割を果たしており、この二つの目的を持つ仕組みとして見直し、存続をしていくのが一つの方向である。
また、人材育成と人材確保両方の役割を持つ技能実習制度と特定技能制度を一連の仕組みとして制度の見直しを図っていく必要がある。
○ 人材育成は、技能実習か特定技能かにかかわらず、日本に外国人を受け入れて育てていくという観点からは絶対に必要な機能。人材確保は、技能実習でも特定技能でも同じ。
○ 技能実習制度を存続できるか議論した上で、現状に合わないのであれば、特定技能につなげる形の人材育成という面を強化させた上で、どのように制度を改善していくかを議論し、検討していただきたい。
○ 技能実習生の来日目的がお金を稼ぐということになっているが、生活の糧を得るために働くことは技能実習生のみならず労働者全般にいえることであるため、そこだけを特筆することではない。
○ 技能実習制度が人手不足対策として活用されている一面もある一方で、技能実習制度を通じて技能修得の仕組みがしかるべき水準で適正に機能しており、人材育成を通じた国際貢献が果たされていることも事実。
技能修得の仕組みと人手不足対応の二つの側面を併せ持った制度としていくことが現実的である。
○ 技能移転、国際貢献という観点と労働力としての人材確保は矛盾しない。ただ、労働3 力としての観点を正面から認めるのであれば、技能実習生の保護や国内労働市場への悪影響を与えないことを盛り込むなど技能実習法は相当見直す必要がある。
○ 国際的には、国際貢献と労働力確保は矛盾せず、極めて真っ当な状態であり、そういうものとして改善すること自体は国際的な基準から外れるものではない。
実態としても当事者の意識として、技能実習生にとって稼ぐことと技能を身に付けることは二律背反ではなく、また、受入れ企業にとってもスキル形成と労働力確保は両立し、どちらも否定できない事実であることは認めざるを得ない。
○ 技能実習制度の目的は、途上国への技能移転であり、日本の企業のために人材育成をするというのはもともとの制度と違うのではないか。
また、実習が存在することにより、途上国の求職者を育ててあげるという形ができて、本人に費用負担させていいというフィクションが生まれているのは問題。
○ 人材育成を通じた国際貢献の制度趣旨とのかい離があることは明らか。
本来の制度趣旨となぜかい離が生じたのか、現在のスキームの課題を整理することが重要。一方で、実際に国際貢献という制度趣旨を適切に果たしている事例もあるため、そうした部分をどう整理するかも考える必要がある。
○ 技能移転を就職というレベルで捉える傾向が強いが、これは日本的な発想。
途上国においては、雇用されて働くということ自体がマジョリティーではない。
技能実習の制度趣旨が本国において習得が困難な技術を身に付けるという要件があり、当然そういったものがない前提で来るため、帰国後に同じ仕事に就いていない、イコール国際貢献ではないというのは非常に日本的な議論である。
【外国人が成長しつつ、中長期的に活躍できる制度(キャリアパス)の構築について】
○ 外国人の方が、日本社会が期待する方向で生活・就労していただくようになるには、ある程度長期で自分の人生設計をする資質を持つ方に来ていただけるかどうかが重要なポイントである。その上で、日本でスキルアップするのは、受入れ企業にとってもメリットがあり、本人にとってもインセンティブになる。
○ 技能実習3号は高度な専門的能力を有する者として、日本語能力検定や技能検定で高次の資格を採られた方には、何かしらのインセンティブを与えることも必要である。
○ 技能実習と特定技能のミスマッチについては、整合性を図る工夫は必要。
○ 技能実習が育成の機能を担っているというのは非常に重要な役割。
スキル形成は、OJTで仕事を通じて能力開発をするという部分が大きい。育成と人材確保は不可分なものであり、そこを分けて考えるのは難しい。
監理団体、実習計画、外国人技能実習機構といった技能実習制度の仕組みを使った育成は非常に有効なのではないか。
○ 前提として、外国人及び企業の双方のニーズとして、最長5年程度の稼働を求めるニーズと、5年を超えてスキル形成を求めるニーズの二つがあり、技能実習でも長くなればスキル形成され、特定技能がそれほど高いスキルは要求されていないとすると、技能4 水準として、必ずしも技能実習の上に特定技能1号が位置するわけでなく、かなり重複しているのではないか。
また、技能実習にはあるが、特定技能にはない分野があるということは、育成という建前に立っていながら実際には雇う側に長期間雇いたいというニーズがないのではないか。
○ 技能実習制度と特定技能制度の職種や業種の不整合は解消すべき。できる限り幅広い業種で、なおかつ一貫してキャリアが積めるような仕組みを考え、二つの制度の連結性を高めることがキャリアパスにつながり、人材育成にもつながる。
ただ、どうすれば特定技能に上がっていけるかは制度として担保する必要があり、技能と日本語のハードルを設けるべき。
○ 技能実習制度の作業区分が細かいことにより、キャリアが広がらないという問題意識を持っている。
技能実習は、技能検定の仕組みとセットになっており、出口が技能検定であるため、作業の細かさとリンクしてしまっている。
もう少し柔軟に大括りにして特定技能につながることは必要だが、大ざっぱすぎてもスキルが上がっているか分からないため、どの程度の括りにするかは検討が必要。
○ 人材育成の中には、身に付けた能力を母国に戻ってその国の開発に生かすという意味での人材育成と、本人の能力を高めて、それが日本の企業にとっても戦力となるという意味での人材育成と二つの意味がある。
外国人技能実習機構の帰国後技能実習生フォローアップ調査では、回答者の4割が帰国後に就業していて、そのうちの6割が実習と同一・同種の仕事という、4掛ける6で20%程度しか関係する仕事に就いていないという回答であり、技能実習制度を国際貢献の制度とするには無理がある。
国内で企業の役に立ってもらうという意味での育成は人材確保が主目的なのであるから、特定技能制度の中に包摂していくのが良いと考える。
仮に特定技能とは別の在留資格を作って技能実習制度から置き換えていくのであれば、新たな制度は特定技能1号や2号と連結した同じ業種、分野で重なり合う形が望ましく、それがキャリアアップにつながる。
○ 中長期的に活躍できる制度にするには、日本語や技能のレベルアップや共生のための環境整備が必要であるが、企業だけに責任を負わせるのは無理であるため、日本社会全体で費用を負担するという考えも必要。
○ 受入れ企業の教育体制の有無も含め、人材育成をセットで考える必要がある。
人材育成がなされなければ、単なる労働力の確保となり、人権上の課題が生じかねない。人材育成は労働者自身の働きがいやモチベーションの向上の意味でも非常に重要であり、公的支援も必要。
○ 仕事の経験を積むにつれて上がる技能や能力を見える化することも重要。
また、キャリアと処遇をつなげていく仕組み作りが重要。
○ 特定技能2号で入れる業種が極めて少ないのは、日本の企業自体が最長10年で帰ってもらっていいと思っているのではないか。本当に外国人のキャリアアップを考えるのであれば、特定技能2号、あるいはそれ以降も含めたキャリアアップや人材育成の仕組み5 が必要。
○ 業種、企業、事業所によってどの程度のスキルレベルを要求するかが違ってくるので、事業所ごとの求めるスキルレベルと必要な訓練期間による選択に対し、ある程度中立的な制度設計が必要。
○ 試験ルートの特定技能1号労働者が技能実習生以下ではないか、という現場からの声がある。
こうした中で特定技能労働者の方が使い捨ての労働力として雇用されてしまうと、特定技能で一人前の労働者として受け入れるということと真逆の結果になってしまうのではないかという懸念があるため、試験ルートと技能実習ルートはきちんと制度設計されるべき。
○ 技能検定や職種区分が細かすぎるという議論があるが、技能検定は重要な外せない要素。
評価が勘と経験に頼りがちなマニュアルワークの世界において、昭和34年からこうした形で検定が整備されてきた趣旨を踏まえると、技能実習あるいはそれに替わるトレーニングの制度においても維持していくべき。
技能検定が現場の職種・仕事と合わないというのであれば、それは検定制度自体の問題で、技能実習固有のものではない。
○ 東南アジアでは、職種単位で技能検定のようなものを相互認証し、それぞれの国において何が対応関係にあるか構築していく動きがあるので、日本の技能検定が例えばベトナムの技能検定のような仕組みとどういう対応関係にあるのか分かれば、技能検定を取得した労働者が帰国後に地元で就職しやすい要因となる。その人自身が持つ人的資本を高めるという視点で見ていく必要がある。
○ 技能実習制度は技能検定が大きな影響を及ぼし、特定技能制度は業界のニーズから生まれているため、そこにずれの原因があるので、そこをスムーズな移行のために見直すことはあり得る。
○ 経済界では、不足する人数を確保したいというニーズもあるが、日本人の雇用を守ることは第一義的。
人手不足業種は特定技能の対象としていくことも考えていく必要があり、技能実習の職種・作業と特定技能の分野をシームレスにつないでいくことが必要。
【受入れ見込み数の設定等の在り方について】
○ マクロ経済でみると人手不足はこれからますます激しくなり、生産性の向上がないとこれから10年の間に100万人を超えるような外国人を入れなければ日本経済は回らないというぐらい深刻であるが、大きな情勢変化があると、企業のニーズは大きく変わる。
長期的な目標を立てるのはいいが、情勢は変化するので例えば、毎年それが妥当なのかを見直す必要がある。また、業界の事情だけで決めないよう、第三者機関を入れて見直しが正しいかをチェックする機能がある方がいい。
○ 労働力の需給関係や年齢構成、人口動態の分析が必要。また、地域における共生のための体制設備や受入れ準備がどの程度できているかも大事な考慮要素である。
政策形成の透明性という観点からも労使双方、有識者、自治体、NGOが入った恒常的な第三者機関が必要ではないか。
○ 人手が不足する業種が各省庁でどのように決まっているか分かりにくいため、第三者機関の設置は非常に重要。
○ 受入れ見込み数の決定や分野追加は、エビデンスに基づく政策立案が肝要。
データに基づいた受入れ見込み数の設定が行えるように制度の見直しが必要であり、様々なステークホルダーの予見可能性が確保されること、また、状況に応じて制度の見直しができるということが欠かせない。
○ 経済見通しのような、より実際のアウトルックに近いことを示して関係者の相場感を作っていく方に注力した方が、機械的にならなくていいと考える。
労働市場テストは人口が増えていた頃の遺物であり、今後の人口減を考えれば、受入れ上限はワークしないのではないか。
○ 現行の特定技能制度における人手不足の判断基準や受入れ人数の設定は政府主導であり、業界事情で決まっている場合もあるのではないか。
労働に関わるルールであることから、労使や外国人支援団体などの多様なステークホルダーが参画する機関を設け、そこで開かれた議論を通じて決定する仕組みにする必要がある。
○ 分野所管省庁よりこの間の取組などについて資料を提出し、説明いただいたが、基本方針に掲げられた基本的な事項が果たされているのか、PDCAにかかる説明・報告は最低限必要だと考えている。
有識者会議のような開かれた会議体において定期的な報告を実施するべきである。
【転籍の在り方について】
○ 技能実習生であるから転籍を認めないという名目上の制度目的にとらわれた在り方は、実態としても正当化されない。
転籍できないことが雇用主側に都合良く利用されているのではないか。また、人権の遵守が国際的にも非常に厳しく要求されていることから、国際的な批判に耐えられる制度設計をするべき。
○ 技能習得の観点から考えれば、人権の尊重を最大限に担保した上で、技能実習制度を外国人材にとっても受け入れる事業者にとっても最初のエントリーステップと位置付け、一定期間、例えば、技能実習1号及び2号の3年程度は同一事業所で一つの技術をしっかり身に付け、なおかつ、日本で生活する上で必要な日本語も身に付けてもらう期間として、よほどのトラブルがない限り、原則転籍不可という制度設計で見直し、存続することが重要。
○ 職種や業種によっては、技能を習得するのに半年か1年あれば十分であるところ、3年間転籍ができないとなると、2年は最低賃金で働く、かつ、転籍ができないことで労働移動を防いでいるので人権侵害といわれる危険性がある。
職種や業種を踏まえ、訓練に必要な期間を一律としないような議論をする必要がある。
○ 国際機関や諸外国がいろいろな分野で人権の観点から評価するのは制度が全てであ7 るため、何年間か転籍が認められないという制度そのものが問題である。また、転籍した場合に本人が在留資格を失って不正規な存在となれば、社会にとっても非常に不安定な存在となる問題もある。
○ 転籍の条件が厳しすぎたり、転籍まで期間が掛かるという問題があるので、転籍を速やかにできる支援機関を頼るなどの様々な方策を検討する必要がある。
○ 労働基準法附則137条では、期間の定めを設けたとしても、1年たてば労働者は自由に退職できるということになっているため、労働基準法上は、1年を超える拘束はできない。
○ 転籍は認める方向になると思うが、初期費用も含めそれまで掛かったコストについて、補填等のルールをどう定めていくか、議論を深めたい。
【監理団体や登録支援機関の管理及び支援の在り方について】
○ 規模が小さく、独自に組合の協同経済事業を実施していない財政収益構造の不安定な監理団体や労働法制の面から違法な取扱いを行った監理団体、支援10項目を行えない登録支援機関などは排除していく方向で考えるべき。
【外国人の日本語能力の向上に向けた取組について】
○ 技能実習生が入国する際には、日本語能力検定のN5以上を保有させることや試験ルートの特定技能外国人については日本語能力をN4相当ではなくN4とするなど統一的なレベルに標準化することが適当である。
○ 日本語能力は非常に重要で大きな要素を占めているが、入ってくる段階でN5レベルの合格を条件とすると、ハードルが高くなってしまい、有用な人材に日本が選ばれなくなるという諸刃の剣の面がある。
○ 少なくとも外国人材が日本に来た際に、困ったときに自分で病院に行けたり、役所に行けたりするように、日本語をしっかり学ぶことは求めていくべき。
技能だけでなく日本語能力も一定のレベルを設けて、自立した生活を送り働くことができる外国人材を受け入れる仕組みにしていくことで、結果的に監理団体や支援団体の負担を少しでも減らすことにつながる。