技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第4回)
法務省 出入国在留管理庁HPより抜粋
議事要旨
日時
令和5年3月8日(水)13:30~15:30
場所
法曹会館2階「高砂の間」
出席者(敬称略)
◎有識者
高橋座長代理、市川委員、大下委員、黒谷委員、是川委員、佐久間委員、鈴木委員(代理出席)、武石委員、冨田委員、冨高委員、樋口委員、堀内委員、山川委員
◎関係省庁等 (内閣官房)
小玉参事官、岡野参事官 (出入国在留管理庁) 福原審議官、礒部政策課長、本針在留管理課長 (厚生労働省) 原口審議官、吉田外国人雇用対策課長、川口参事官(海外人材育成担当) (文化庁) 相田国語課日本語教育評価専門官 (外国人技能実習機構) 大谷理事長、久富指導援助部長
議事内容
○ 出入国在留管理庁礒部政策課長より、【資料1】に基づき、「ヒアリング結果」について報告。
○ 出入国在留管理庁礒部政策課長より、【資料2-1】及び【資料2-2】に基づき、「論点第2」に係る現状について説明。
○ 各有識者より、論点第2及び論点全般などについて、下記のような意見があった。
【国際労働市場の実態及びメカニズムを踏まえた送出機関や送出しの在り方について】
○ 高額な手数料の問題は、技能実習制度を、人材確保を目的とする新しい制度に置き換え、転籍が可能な制度とするだけでは解決しない。
技能実習制度で有効な対策は引き続き取り組むとともに、特定技能制度の仕組みも参考に、幾つかの対策を並行して行うことが必要ではないか。
○ 送出機関の手数料支払の問題については、ILOの第181号条約を送出国も批准することや、送出国の国内法で同様の内容を規定することが一つの解決策であるが、それがすぐに全面的に実現しないのであれば、送出機関を経由して監理団体にあっせんする方法だけでなく、特定技能制度のように雇用主と直接雇用契約を結ぶ方法や民間職業紹介機関を通じて雇用契約を結ぶ等、幾つかの方法がありうることとすることで、最も合理的で費用が安くなる方法におのずから収れんしていくのではないか。
○ 仲介者への費用支払の問題については、送出機関の窓口にたどり着くまでの情報が不足していないか、送出機関の窓口が全ての人に公平に開かれているのかといった点を検証して対策を考えるべき。
また、悪質な送出機関や高額な手数料徴収の問題が、日本からの通報にもかかわらず是正されない場合、二国間の合意として、当該国からの受入れ自体も停止するというような強い選択をできるようにすることも検討するべきではないか。
○ 国内の募集方法について、民間の職業紹介機関やハローワークが十分な機能を果たすことで、不適正な仲介業者が入り込めないような運用にするべき。
○ 国際労働移動の世界では、いい事業者が経済的にインセンティブを与えられて、得をする仕組みを作るのが重要と言われている。この観点からすると、個人が直接選べるシステムも重要であるが、同時に、日本の受入れ側と送出機関のBtoBのマッチングのプラットフォームがないことも非常に大きな問題である。
JETROなどを活用して、現地の送出機関と日本の受入れ側のマッチングの場の提供や優良なところを選べる仕組みを作ることも非常に重要である。
○ 技能実習生が来日前に負った借金の返済に追われ、様々な問題につながっている可能性もあるため、国として、入国に当たっての費用負担などの手続の透明性の確保について、相手国等との調整が必要ではないか。
○ 新しい制度では、渡航前費用の適正化、借金に依存させない仕組みを作ることが大事。
費用の透明化に当たり、送出機関、実習先に関する情報や実習先における就労状況、賃金の支払状況等を外国人技能実習機構等が一元的に把握できるようなデータベースを構築するのも一つの方策ではないか。
これにより送出機関に対して過大な借金を抱えているようなケースを早期発見して把握することが可能となり、是正措置を執ることも期待できる。
○ 主要な送出国の一つである中国について、送出機関の基準を明確化し、適正かつ円滑な受入れのためにも早期に二国間取決めや協力覚書の締結をすべき。
○ 優良な受入れ企業にインセンティブが働くような仕組みや優良な送出機関を選べることが非常に重要である。
例えば、送出機関ごとの人数やその後の定着実績等を含めたレーティングのようなもの、あるいは悪質な送出機関やブローカーの公表により、受入れ企業又は監理団体が適切な送出機関を選べる仕組みを作ることが非常に大事である。
○ 来日するための費用の負担について、技能実習生と事業者とでどのように負担するのかを考える必要がある。
低利融資のような金融的な手法でのバックアップや、外国人材を受け入れたい自治体側による支援など、様々な方法を多面的に考え、解決策を考える必要がある。
○ 今般の制度改革の最大のポイントは、送出しの段階をいかに適正に管理・運営できるかどうかだと考えている。
そのためには、送出国に対して、送出しの仕組みづくりや送出機関の規制の在り方に係るキャパシティビルディング支援を、二国間協定(改定)とセットで提案・提供することが考えられる。
○ 技能実習制度においては、責任ある送出しや就職あっせんの機能の面からも送出機関は今後も必要であるため、悪質な送出機関を淘汰し、送出機関を選べる仕組みづくりが必要。
特定技能制度においては、送出機関を関与させずに受入れをすると一時帰国等のトラブルが多く発生しているため、責任を持って送り出すことができる送出機関は必要である。
母国との連絡やトラブル対応のために一定の管理費を送出機関に支払い、責任を持たせた方がよい。
○ 送出機関に対する一定額の支払は必要だと思うが、現行の二国間協定に、入国前の更なる借金の軽減策を盛り込むべき。例えば二国間協定で各国の事情に合わせた手数料の上限を設定し、法外な手数料支払と借金を防止する措置を盛り込むのがいい。
○ 借金の問題は非常に大きな課題であり、相手国に対し、継続的な対応と協議を通じて、悪質な送出機関を排除するよう求めるとともに、きちんとした送出機関を選択できるよう見える化することも重要ではないか。
○ 不適正な送出機関を排除する方策として、ILO第181号条約の批准を要件にすることや、新規の受入れの停止措置を厳格化し、悪質な送出機関からは一切受入れを認めないよう制度化することなども考えられるのではないか。
○ 送出機関には日本の行政権限が及ばないことから、国家間合意によらざるを得ない面があり、優良な送出機関を選択できる仕組みを確保することも重要である。
しかし、国の取組だけでは実現が難しい場合もあり得ることから、例えば、ILOが政府と労使団体とともに発展途上国の企業の労働法令の遵守状況をチェックして公表している取組もあることから、政府以外の機関も巻き込んで、優良な送出機関を見える化できるような仕組みを作ることが考えられる。
○ GtoGによる政府同士による取扱いが、一つの方策になるという御意見もこれまでみられたが、そのためには莫大な費用がかかるのではないかと考えている。
本来、国や地方公共団体の行政がやらなくてはならないことを予算や人的な制約から行政だけではできないことから、監理団体等の民間の支援事業者が、社会性、事業性、革新性を備えた「ソーシャルビジネス」的な性格でやっていくべきである。
それらを管理しやすい仕組みを充実させ、監視をもっと効かせれば役立つものと考える。 ○ JICA、JETROは一生懸命やってくれているが、組織の性格や対象事業範囲からみて、送出機関の取締り、見分け等については、範囲外なのではないか。
もう少し踏4 み込めるような機関が必要なのではないか。
【外国人の日本語能力の向上に向けた取組について】
○ 外国人労働者の適正な就労に向けた課題として、日本語の充実を挙げている事業所が多くあり、日々の日本語によるコミュニケーションが多いほど、日本語習得が円滑にされている傾向がある。
技能実習生の日本語習得機会の確保だけでなく、コミュニケーション力向上のために地域や事業所における担当スタッフを配置するための支援を行うことなどにより、日本語能力の向上や技能実習生の定着につながるのではないか。
○ 自治体による日本語能力向上の取組について、各自治体の実情に合わせた取組を行う必要があるが、それには国の財政支援や日本語教育に関するノウハウの提供など手厚い支援が重要である。
○ 入国前に、一定の会話が通じ、自分自身で要求ができる程度の日本語能力があることは必須。技能実習制度については、入国時には、日本語能力検定試験のN5以上、技能実習2号修了時には、技能検定とともに日本語能力試験のN4以上の試験合格を必須にするべき。
○ 特定技能で求められる日本語能力はN4相当となっているが、「相当」ではレベルが分かりにくいため、「相当」とはせずに、N4やA2などに統一するべき。
○ 日本語教育について、不当なハードルにならない取組が必要。入国前に課す日本語能力が高すぎると教育費用が不透明な形で要求されたり、日本語能力の偽造証明書が高いレートで流通するなど、別の負担が生じることがあるため、入国前に要件を課すとしても、可能な限り安く、透明性の高い形で、十分な供給がされる必要がある。
ただハードルを課すだけでは、そこに至る道筋で様々な中間搾取が生じかねないため、十分な検討が必要である。
○ 語学教育については、企業側も外国人本人のどちらも働くことに注力したいので学習のインセンティブが弱い。
地域による日本語教育が拡充されることも重要だが、企業と外国人本人の双方にとって学ぶことがプラスになるような動機付けの仕組みを作ることが重要である。
○ 入国前に日本語能力を要件として課すと、費用が不透明になり、結果的に質の担保もできず、不満も大きくなる。
一方で、入国前に最低水準の日本語を学習して欲しいとの意見もあることから、N5取得を要件とするのが現実的ではないか。
○ 入国後については、企業だけでなく、国や自治体もコストを負担しながら、日本語教育を受け続けてもらえる環境を作ることが大切である。
○ 技能実習制度においては、やさしい日本語を技能実習生に周知し、実習実施者に徹底する必要がある。また、学科試験に外国人技能実習機構作成の日本語教材の内容も盛り込み、学習してもらうことも一考である。
また、入国前にN5の試験を課すよりも、入国した後に育てていくのが一番よく、来日してから実習実施者や監理団体などから手厚5 い支援があることが、最終的には選ばれる国の条件の一つになると考える。
そのためには、取組に対する経費や手間の軽減に向けた一定のルール作り、国費による補助などの検討をしてはどうか。さらに、日本語習得の努力をした技能実習生等には優遇措置を盛り込むのも一案である。
○ 特定技能制度では、登録支援機関により支援の内容がまちまちであり、支援計画書はあるものの、ルールが明確にされていないため、受入れ機関側も判断が難しい状況にある。
その部分を統一することにより、外国人本人や受入れ機関が支払う費用を明確に出来るのではないか。
○ 入国後にトラブルが起きないよう、また、自分の身を守るためや業務遂行のためにも入国前に一定の日本語能力を求めることは必要である。
レベルについては、N4、N5、あるいは会話に力点を置いた独自の試験なのかということをきちんと議論していくべき。
コスト負担については、日本政府の呼び寄せ対策の一環として、オンラインコンテンツを作成したり教科書を配布するなどして、外国人の負担をなるべく少なくすることが必要である。
また、教師が必要な場合には、日本政府が支援して、あるいは受入れ事業者も一定の負担をして、安い費用で学べるような場を提供することも一つの方策である。
○ 受入れ企業が業務に必要な日本語教育をすることは当然だが、日本の産業や社会に有益な人材を育てるという意味では、公的な負担で日本語教育の仕組みを作ることも考えるべき。
ドイツには、国も費用を負担して、ドイツ語のプログラムを受講できる仕組みがあり、これを受講すると在留資格の関係で有利に取り扱われるとのことである。
職業訓練として必要な日本語能力についても同様の仕組みを考えたらどうか。
○ 技能実習制度においては、監理団体が行う入国後の日本語教育について、講習方法や内容、科目ごとの時間数が監理団体によってかなり濃淡があるため、一定の基準を設け、講習の質の担保をすることが必要である。
○ 優良な実習実施者又は監理団体の要件として、「地域社会との共生」の中に「日本語学習の支援」があるが、飽くまで選択肢の一つであり、選択しなくても優良になることができるもの。日本語学習の重要性に鑑みると、必須要件とすることも効果があるのではないか。
○ 日本語教育だけでなく、地域で支援を受けるためにはそのための時間の捻出や交通手段の確保が必要であり、実習実施者や監理団体による継続的な支援が必要。
○ 外国人労働者にコスト負担のしわ寄せが生じることはあってはならない。実習実施者が一定程度負担し、必要に応じて国が支援することが必要である。
○ 特定技能制度では、登録支援機関に日本語学習機会の提供が義務化されているが、機会の提供にとどまっている。
適切に情報提供がされているか不透明であり、実効性に課題がある点については見直すべき。
○ 入国後の日本語教育について、優良な実習実施者や監理団体を認定するための要件として更なる加算措置を図る等、受入企業等が積極的に取り組むインセンティブを高めることは重要。
○ 日本語を学ぶ意欲のある外国人と日本語教育を提供する自治体やNPO等のマッチングを支援する仕組みも必要である。
また、政府においてオンラインの教育ツールの充実等にも努め、周知をしていただきたい。
○ 技能実習生に必ずしも日本語能力向上の意欲が高くなく、また、受入れ企業も仕事上は問題がないので、仕事を休んでまで学習する必要性を感じていないというのが実態ではないか。
この意識をどう変えていくかが非常に大きなポイントである。一方で、日本語が通じないために仕事外で問題が起きたときに企業や監理団体が常にサポートしなければならず、負担となっているため、長く働いてもらいたい、長く働きたいのであれば、日本語をしっかり学ぶ、学ばせるというインセンティブが働く仕掛けを作る必要がある。
外国人本人、受入れ企業、自治体がそれぞれ役割と費用を一定程度負担することは仕方がない。
加えて、これを国としてどうやってサポートしていくかが求められる。 ○ 仕事をしながら、コミュニケーションの中で日本語が上達する部分がある。事業主が仕事をさせる中で、日本語の社員と一緒に仕事をするような機会を積極的に作り、技能実習修了時に日本語検定等でチェックする機能を働かせることによって、自然と日本語を覚えていくような環境を作っていくことも重要ではないか。
○ 業務遂行上の安全性などのための日本語は制度としてきちんとやるとして、生活面の日本語は、地域のNPOやボランティアを活用することで、地域での国際交流にもつながるので、そのような地域の役割に対して支援することもあり得るのではないか。
【制度目的(人材育成を通じた国際貢献)と実態(国内での人材確保や人材育成)を踏まえた制度の在り方について】
○ 技能実習制度本来の目的に沿って活動している監理団体、実習実施者も多く、また、技能修得という本来目的のために入国した技能実習生も多いことは明確である。技能実習生の受入れに人材確保の実態があることは否めないが、技術・技能を修得するとともに、日本のよさや伝統文化を持ち帰り、普及・伝播してもらうという人材育成の視点からも効果的な制度である。
特定技能と技能実習は目的が異なるため、明確に対象をすみ分け、両制度を共存させながら監理団体と登録支援機関、実習実施者と特定技能所属機関を生かしていくことが必要。
○ 制度目的と実態のかい離については、実態に合わせ、日本の人材不足に応える制度とし、技能実習制度を廃止した上で、国内産業にとっての人材確保の制度として再出発することが必要。
それにより、日本のどの産業にどれくらいの人数の受入れが必要かという議論や検証ができるようになり、特定技能と整合性がとれた、キャリアパスを見通すことのできる制度になる。
○ 人材育成による国際貢献という側面は実態としてかなり希薄になっており、日本の産業界にとっての人材確保のための制度として位置付け直すべきである。
日本の産業にとっての人材育成という側面はあるかもしれないが、それはほかの就労系の在留資格でも同じであり、その雇用主の下で働かなければ、在留資格を失うという必要はない。
○ 諸外国において、スキルレベルはあまり問わず、かつ転籍等を認めるような自由労働市場に近い形をとることでうまくいった例は1件もない。結局、他の先進国では、期限付労働移民プログラムとして、農業労働者などごく一部の職種に絞り、期間を限定することで数を確保し、ハイスキル層などそれ以外については、極めて厳格な要件を課すことで事実上受け入れていない。
○ 今後の外国人労働者受入れ政策は、グローバルコンパクトにもあるように、スキルズモビリティーパートナーシップスとして、スキル形成をプログラムとして行う観点から制度設計をしていく必要がある。
○ 技能実習が技能移転だということよりも、労働力として正面から認め、長く日本で生活者として暮らせる仕組みを考えていくのだろう。
○ 技能実習制度に労働者性を認めたときに、スキルの向上をどこまでハードルとして盛り込むか整理する必要がある。
【外国人が成長しつつ、中長期的に活躍できる制度(キャリアパス)の構築について】
○ 労働力としての活用と人材育成・技能移転は矛盾せず、人を育てて受け入れることによって労働力を高度化させ、帰国する人は高度なスキルを得て母国に貢献し、残る人は日本に貢献するという、ある種の経済政策又は労働市場政策として積極的に位置づけることはあり得る。
その場合、有期契約で非熟練の外国人の場合は、OJTだけでなく基礎的・計画的な人材育成をする必要がある。
他方で、特定技能外国人は即戦力と位置づけられているが、即戦力にもいろいろなレベルがあり、人材育成的な機能や支援団体の強化等も必要になる。
また、試験の在り方や人材育成の観点から、両制度をスムーズに接続していくことはできるのではないか。
制度的な位置付けからすると特定技能は技能実習ほどには計画性は必要ではないかもしれないが、支援機関の役割は重要である。
○ 日系人の調査を以前行ったが、数年で帰るのか、在留資格を更新し続けるのか方針が決まっていないので、キャリア形成の意識がつかず、それが子供にも引き継がれていた。
こうした経験からすると、人材育成の観点から、日本に行く場合にはどのようなキャリア展開ができるのかという観点をもてるようにすることが必要ではないか。
○ 技能実習制度と特定技能制度を連結してキャリアパスを構築する中で、賃金も上昇していく仕組みが作れないか。10年以上を見通して、外国人の方が日本に長期的に滞在し、キャリアを積んで、地域住民となってもらえるような仕組みが作れるといい。
○ 国内産業又は外国人本人にとっての育成を考えるときに、どれくらいの期間、計画に従った育成が必要なのかをきちんと議論・吟味をする必要がある。
仮に育成の観点から8 一定期間が必要とするとしても、今の技能実習制度では、3年間は同じところで働くが、これは実情を考えると長すぎる。これより短期とし、その後はいろいろな仕事をしながら、職場も場合によっては違うところでも技能を身につけていただくべき。
○ 日本語のレベルにしても技能のレベルにしても、分野ごとに水準の要件を作っていき、シンプルな制度にしていくべき。
○ 仕事をしていれば、何かしらのスキルは形成されるが、どのレベルのスキルを求めるかを明確にしておく必要がある。技能検定は、現在の制度では、出口のレベルチェックとしては一つの選択肢であるが、多くの外国人のスキルを測る物差しとしてきちんと機能しているかは、もう一度考える必要があるのではないか。
【受入れ見込数の設定等の在り方について】
○ 仮に特定技能制度と技能実習制度が連結し、技能実習にもある程度労働者性を認めることとなった場合、技能実習の後継的な仕組み、あるいは特定技能の後継的な仕組みのいずれにおいても、基本とすべきは各企業の受入れ能力である。
現行の技能実習制度における一社当たりの常用職員数に応じて設定される割合がまずベースにあるべきではないか。
優良な受入れ企業については、その枠を広げていき、その逆もしかりとする仕組みがベースであって、その結果の積み上げが分野ごとの人数枠になるのではないか。
○ それぞれの分野でも全国まとめて受入れ数を設けるのではなく、各地域で不足する人材に応じた受入れ数を、その地域の自治体と業界等が話し合った上で、それに必要な自治体としてのサポートを行う仕組みを作っていくという取組も必要ではないか。
【転籍の在り方について】
○ 日本にとっての人材確保が目的であるとすれば、原則として転職を禁止する建て付けにする理由はないことは他の資格と同様。転籍制限が外国人労働者を雇用主に大きく依存させる可能性があり、彼らが権利を行使することを間接に妨げているというILOの指摘は重いものである。
暴行や虐待、秘密裏の出産という普通の雇用形態では考えられない人権侵害を防止するためには、転籍制限をなくすことが不可欠。
○ スキルアップのためには、余り頻繁な転職は望ましくなく、訓練する側も途中で変わるリスクがある中では訓練に及び腰になってしまう。一方で、転籍制限を課すことは、移動の自由を、個人に制限として課すことで、個人に機会費用の負担をさせていることにもなってしまう。
これらを解決するには、中長期に活躍できるような訓練投資をした企業が得する仕組みや、外国人本人も優良な成績を上げたら優遇されるようなインセンティブを与えることが重要である。
そうすることで、監理団体のレーティングも細分化し、受入れ数も細かく等級付けることで、適正な雇用者や監理団体が残っていくようにすることが重要ではないか。
○ 技能実習制度の枠組みを残した上で、特定技能制度との連結を強化し、技能実習制度9 においては人権尊重を前提として転籍を認める形でどうか。
○ 転籍に関して国際的な批判を免れない点をしっかり押さえ、そこだけはカバーした上で、二つの目的を持った制度としての建て付けをしっかり考えていく必要がある。これにより、一定程度の転籍を認めざるを得ないのであれば、長く働いてもらえるようなインセンティブを付与していくことでカバーしていくことになるのではないか。
【その他】
○ 産業全体に及ぶ人材不足や処遇改善の原資がないという構造的な問題は、産業政策課題として、国が解決しなければならない課題。外国人労働者政策と併せて業所管省庁が産業政策等の観点からも検討・連携し、多様なステークホルダーと協議した上で、どのような施策を講じるかが重要である。
この視点から、業所管省庁の責任と役割の明確化を図るのは重要な課題。
○ 生活者としての外国人労働者の支援の在り方の検討が必要。社会保障や言語、教育、公共サービスや多文化理解などの環境整備も行っていかなければならず、そのコストは、事業主が応分の負担をすることを前提に、国、自治体でバランスを取った負担の在り方を検討することが必要ではないか。
○ 技能実習であれ特定技能であれ、働く外国人当事者にとって賃金は最大の動機であり、今回の制度改正においても、賃金の在り方は非常に重要な検討課題である。
特に技能実習については、各都道府県の最低賃金に合わせているのが実態であるが、地方の中小企業が人材を確保できる環境を整えるには、当初の賃金を全国斉一にすべく、補填の仕組みをつくるなど、制度的な検討が必要ではないか。
○ 受入れ企業が最低限果たすべき責任についてもきちんと考えないと、全体の人件費のコストの中で手数料や賃金をどう考えるかという問題も出てくるので、制度全体の仕組みが本当にそれで回るのかを押さえておく必要があるのではないか。
○ 外国人と雇用企業の2者の関係だけではなく、産業政策や地域政策といった観点も必要。人手不足も業界や地域によって異なる中で、業界団体や業所管省庁が補助金や支援のスキームを業界ごとに作るなど、様々なアクターが政策を一体的に組み上げていくという視点も必要でないか。
○ 技能実習生が失踪するなどによって制度を逸脱した場合のサンクションの在り方については、一般的に、正規の居場所を失った不法滞在の外国人は、事件や事故の被害者にも加害者にもなりかねない脆弱性が認められるところ、いきなり在留資格を失い、不法滞在に陥るということでよいのか、慎重な検討が必要。