第8回有識者会議(2023年6月14日)

技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第8回)

法務省 出入国在留管理庁HPより抜粋 

 

 

日時

令和5年6月14日(水)13:00~14:30 

 

場所

法務省20階第一会議室 

 

出席者(敬称略)

◎有識者

高橋座長代理、市川委員、大下委員、黒谷委員、是川委員、佐久間委員、 鈴木委員(代理出席)、武石委員、冨田委員、冨高委員、樋口委員、堀内委員、山川委員

 

関係省庁等

(内閣官房) 小玉参事官、岡野参事官

(出入国在留管理庁) 福原審議官、本針政策課長、安東室長

(厚生労働省)   原口審議官、吉田外国人雇用対策課長、川口参事官(海外人材育成担当)

(外国人技能実習機構)   大谷理事長 

 

議事内容

 

○ 出入国在留管理庁本針政策課長より、【資料1-1】ないし【資料2】に基づき、「特定技能2号の対象分野追加」及び「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」について報告。

 

○ 出入国在留管理庁本針政策課長より、最終報告書取りまとめまでの流れを説明。

委員から、最終報告に向けて各委員が考える、あるべき制度の全体像やポイントを有志委員からプレゼンテーションをすることについて提案があり、了承。

 

○ 出入国在留管理庁本針政策課長より、【資料3】に基づき、「最終報告の取りまとめに向けた論点(案)」について説明。

 

○ 各有識者より、特定技能2号の対象分野追加、外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策及び論点(案)等について、下記のような意見があった。 

 

 

【有志委員によるプレゼンテーションについて】

 

○ プレゼンテーションを行うことは賛成だが、論点ごとの議論の時間が十分確保される2  よう、会議の回数等については柔軟性を持たせるなど配慮すべきである。 

 

 

【特定技能2号の対象分野追加について】

 

○ 各分野で受け入れる人数枠の算出根拠や、業界・分野からの要請などの実態に分かりにくい点があることから、公労使を交え、業界・分野のヒアリングや会合を設けて、様々な関係者の意見やエビデンスを踏まえつつ判断する仕組みを設けた上で、閣議等に諮る形式がよいのではないか。 

 

 

【外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策について】

 

○ 技能実習の見直しに関する「発展的解消」という表現が、有識者会議の中間報告書の趣旨と大きく異なるものではないと理解したが、「発展的」というとこれまで問題がない制度をよりよい制度にするという印象も与えかねない。

しかし、技能実習制度では、人権侵害があって内外で厳しい批判を受けてきたことも有識者会議の出発点であると理解している。

この会議のミッションがこうした人権侵害の事案の原因となる構造的な問題を直視し、問題を解消して新たな制度を提案することであることを内外に示し続けていただきたいと思うし、この会議でも意識すべき点である。

その一方で、現在技能実習生を受け入れている職種について受入れの門戸を閉ざすことを意図しているわけではなく、むしろ必要な職種に必要な人を適正に受け入れる制度を考えているということも、メッセージとして届けることも必要である。

この双方のメッセージをバランスよく届けていただきたい。 

 

 

【新たな制度及び特定技能制度の位置付けと両制度の関係性等について】

 

○ 総論が非常に重要であり、総論が各論の論点に影響を与える関係にある。

新たな制度を導入した場合の特定技能との相互の関係が重要であり、特定技能1号の技能水準が新たな制度よりも下になってしまっては制度全体の整合性に欠けるので、論点(案)の「(3)新たな制度と特定技能制度の関係性」に受入れ人材の技能水準についても入れるとよいのではないか。

 

○ 受入れの現場には技能実習制度が廃止されるということで制度が全くなくなるイメージがまだあることから、新しい制度をどのように位置付け、特定技能制度とどのような関係性になるのかを早めに議論して、現場にも分かってもらえるように進めていくのがよいのではないか。

 

○ 技能実習制度の企業単独型は、これまでの議論でも不適正な事例は大変少ないことや技術移転等に寄与していることが示されていることから、技能実習制度が発展的に解消される際にも、同様の仕組みは維持されるべきである。この仕組みを維持する方法については様々な観点から検討を要するが、企業や外国人にとって分かりやすく利便性の高いものであることが望ましい。

 

 

【人材育成機能や職種・分野等の在り方について】

 

○ 人材育成機能については実効的な制度を作成する必要がある。

また、マニュアルワークにおけるスキル形成について、現場に精通している分野ごとの専門家の意見もきちんと聞いた上で、転籍制限やインセンティブ等の制度設計も併せて行う必要がある。

 

○ 人材確保・定着のためには継続的な人材育成が必要であり、両制度の対象職種や分野の全てについて、人材育成が適正に実施されるような仕組みを検討すべきである。

人材育成と処遇の向上はセットであり、同等報酬規定の実効性の確保や賃金や処遇の在り方についても検討していく必要がある。

 

○ 技能実習の移行対象職種に含まれていない作業についても、新しい制度の中では位置付けてほしいとの要望もあるので、今後議論していきたい。 

 

 

【受入れ見込数の設定等の在り方について】

 

○ 特定技能2号の実務要件は、分野により単なる実務経験でよいとするものや日本国内の経験に限るもの、監督者としての経験を要するものなど様々である。

更に技能に関する評価基準は技能検定1級と同等となっており、合格率はおおむね3割程度になることが見込まれると報道されている。

こうした実務要件やそもそも特定技能1号の試験の合格率自体が分野によってかなり幅がある中で、特定技能2号の分野間の難易度の均衡をいかに取っていくかということは非常に重要となる。

特定技能2号試験の合格率は、我が国における外国人労働者の供給量全体を左右する重要な指標となり得るものであり、新たに創設する制度に事業者が参加するかどうかのしきい値をも決定する要素になると思われる。

 

○ 受入れ見込数の設定の在り方について、透明性、予見可能性など、手続的な面に配慮して議論するのに加え、より実務的な面では、試験の合格率及び合格者数をモニタリングの指標として、各種国家試験の試験委員会のような場で、全分野を一律に見ていくことも考えられるのではないか。

 

○ 技能実習制度を発展的に解消して新しい制度へ移行する前提として、いわゆる移民政策でないとする考え方を尊重しながら、やはり日本人の雇用を妨げない範囲で、人手不足の業種を新制度や特定技能制度の対象としていくことが重要ではないか。

大都市部だけに海外からの人材が集中するのではなく、地方の中小企業が人材を確保できるよう、特定技能制度の分野ごとの不足人数や受入れ人数、現状の技能実習制度の企業ごとの受入れ可能人数の両面で受入れを考えていく必要がある。

 

○ 必要性や妥当性が明らかにならないまま対象職種や分野を追加するプロセスは問題であり、透明性確保は見直しの議論において主要な論点である。

新たな制度と特定技能制度の職種を一致させるかどうかも含め、丁寧に検討することが必要である。例えば、技能実習制度では、職種や試験内容の妥当性を審議会で検討するプロセスがあるが、特4定技能制度にはそれがない。

プロセスの透明性が確保される方法について、「受入れ見込数の設定等の在り方」と併せて整理していく必要がある。

 

○ 特定技能制度の受入れ見込数の設定については、各指標や取組内容の評価基準を明確にすることで透明性を担保し、適正化していくことが必要ではないか。 

 

 

【転籍の在り方について】

 

○ 「(4)転籍先を速やかに確保する方策」について、特定技能でも同様の問題があることから、特定技能も含む旨を入れるのはどうか。

 

○ 転籍に当たり、非正規なブローカーなどが国内でばっこすることになってはいけない。

そのためには監理団体だけに転職のあっせんの役割を担わせることは無理があることから、適切な職業紹介が行われるように、職業紹介の担い手の問題、職業紹介の充実ということも論点とすべきであり、「転籍を含む在留資格変更時に役割を果たすべき公私の機関(業所管庁、ハローワーク、民間職業紹介事業者など)とその在り方」の追記を提案する。

 

○ 転職等した場合、つまり本来の制度の枠から飛び出した場合であっても就労している場合については、どのように取り扱うか検討すべきである。

安易に非正規滞在者として、取締り・摘発の対象に追いやってしまうことのないよう、制度的な工夫を凝らす必要がある。

 

○ 転籍制限ありきではなく、人材育成の在り方をしっかりと検討した上で、真に必要とされる場合に極めて最小限の制限を設けることが重要である。

人材育成機能は新たな制度の本質に関わる問題ではあるが、一方で転籍制限は単にそのための多くの手段の一つにすぎないのであって、一方を認めれば他方が自動的に付いてくるといった形で議論を進めることは適当ではない。

 

○ 技能修得には一定期間が必要であり、また、受入れ費用負担、事業計画等の観点から、ほとんどの事業所で一定期間の在籍を望んでいるという実態がある中で、転籍があった場合の受入れ企業側と転籍先企業側の間における来日時のコストや人材育成のコストへの対応策などをきちんと議論する必要がある。

 

○ 技能実習生の入国に際し、各手続に時間を要するため、受入れ企業に配属されるまでに半年以上かかるという声もある。

技能実習制度の見直しによって転籍制限が緩和されるのであれば、転籍に伴う後継者の速やかな確保のためにも、入国手続の円滑化についても併せて議論いただきたい。

 

○ 新たな制度の期間は5年とし、前半の3年は人材育成期間、後半の2年は人材確保を主眼として、この間の転籍は、前半は賃金面や大都市に行きたいという理由は認めず、1回とする又は労働契約法の考え方に沿って1年ごとに認めるとするのはどうか。

その際の転籍費用については、根拠を明確にし、転籍先の事業者が負担することとする。 

 

 

【監理・支援・保護の在り方について】

 

○ 特定技能制度では、外国人技能実習機構に当たるような機関が存在しないという指摘もあることから、「(5)外国人技能実習機構の役割に応じた体制の整備等」に「対象と5  なる在留資格の範囲」を加えることを提案する。

 

○ 支援・保護の局面では、監理団体や外国人技能実習機構に支援を委ねるだけではなく、身近なところで相談できる場所が必要である。各自治体に設置されている一元的相談窓口を国が支援しながら、各自治体が充実させ、労働関係についても相談できる場を作ることが支援・保護のもう一つの方向性であると考えるため、「国・自治体・法テラス等の公的機関と弁護士会やNGO等の支援・相談体制の在り方、これらの機関と技能実習機構との連携の在り方」を論点項目に加えることを提案する。

 

○ 「(1)新たな制度における監理団体による監理・支援・保護の在り方」については、「在り方」の前に「要件」を加筆してもよいのではないか。

特に支援の面で、転籍制限を緩和することとなると、監理団体が転籍をより支援するような役割も果たし得る。

そのためには、中立性や傘下企業が複数いることなどが要請されると思うので、要件面から検討することもあり得るのではないか。

 

○ 新たな制度と特定技能制度の適正化を実効的にするためには、国による一元的な監督機関の体制整備や指導監督の強化が重要である。例えば、外国人技能実習機構が新たな制度と特定技能制度の両方の監督指導を担う場合、相当な人員と財源が必要になるので、本当に担うことができるのかも含め、実効性を担保し、両制度全体を底上げ・適正化するための方策を考える必要がある。 

 

 

【特定技能制度の適正化方策について】

 

○ 登録支援機関の手数料に上限を設けることや支援10項目を自身で行えないような登録支援機関は排除等を含めた取扱いについて、協議することが必要ではないか。

 

○ 試験ルートの特定技能外国人については、日本語教育や共生のための支援実績とノウハウのある監理団体を活用し、委ねることも得策である。

 

○ 登録支援機関について、適格性や質の担保、特定技能外国人に対する支援の必要性を考えると、許可制としたうえで、要件を厳格化することも必要ではないか。 

 

 

【国・自治体の役割について】

 

○ 労働問題に限らず、外国人労働者とその家族の社会生活のオリエンテーションや医療の相談、家庭問題、教育等の問題についての相談体制の在り方についても論点にすべきではないか。

 

○ 新たな制度の下で来日することになる外国人材についても、地方と大都市圏における就労環境や生活環境の格差是正の在り方を検討する必要がある。

 

○ 今後、各分野における積極的な政策を推進していくに当たり、分野ごとに各産業分野の成長戦略の一部として積極的に位置付けていく必要がある。 

 

 

【送出機関及び送出しの在り方について】

 

○ 監理団体によるマッチングを前提とせず、受入れ側の直接採用や職業紹介事業者のあっせんの仕組み等、採用方法の在り方についても論点とすべきではないか。

また、求職側には日本語能力や技能について、求人側には受入れ企業として必要な要件について、透明で客観的な基準を設けて迅速に認定するということも課題である。

さらに技能実習では、送出機関、監理団体、受入れ機関を経ていく間に、提示される労働条件が変わっていってしまうという問題も聞くため、日本の公的機関が受入れ事業者の情報を提供することも考えられる。

 

○ 「(2)外国人の来日前の手数料負担を軽減させる方策」について、「軽減させる」とすると、外国人本人に手数料を負担させることはやむを得ないというところから出発しているように読める。

他方で日本はILOの181号条約を批准しており、来日する労働者の手数料負担を前提としないということを示す意味では、「手数料負担をなくす方策」や「手数料負担をなくす方向での方策」といった書き方がよいのではないか。

 

○ 送出し段階において充実したマッチングが行われ、外国人材と受入れ側の双方が十分に納得している場合には、入国後に問題が生じることが少ないと考えられることから、マッチングの充実方策について、より踏み込んで検討すべきである。

 

○ マッチングや仲介機能の適正化と充実は、国外だけの問題ではなく、国内においてもあり得る。国外・国内を問わず議論をするため、新しく(3)として「マッチング仲介の適正化又は充実」という点を追加してはどうか。

 

○ 悪質な送出機関の抽出や選定は、政府間交渉となるため、取締りや処罰をするのは難しい状況だと思う。そのため、入国後に失踪や行方不明にならないよう、送出機関や監理団体の行動に目を光らせる必要があり、外国人技能実習機構の機能拡大と充実に期待したい。 

 

 

【日本語能力の向上方策について】

 

○ 入国後の共生を高めるためにも日本語教育は重要であり、N5を修得させることが必要ではないか。